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夕暮れのジャスミン

30年来の友達に、電話をしました。
「そろそろ咲き始めたね、桜を見に行かない?」
「そうだね、そろそろかな」
ほんとうは、もう少し先のほうが、満開を見ることができそうなのですが
仕事の都合もあり、そして何より待ちきれません(笑)

とりあえず行ってみよう!
そして、ソメイヨシノにはまだ少し早かった週の初め、友達とでかけました。

行き先は、私に任せるということでした。
それなら、ぜひにも行って見たい桜がある、
どちらにしてもまだソメイヨシノは二分咲き、だったら枝垂桜にしよう。
そこへ行くには、
かつて友達が部屋をかりていた駅を通るのも選んだひとつの理由です。

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友達は私より、3つ年上。
学生時代に初めて会ったときには、ずいぶん大人に見えたし
恋多き彼女は18歳の私のことなど、まるで子供扱いでした。
それでも12年間の女子校生活では出会わなかったタイプの彼女に興味津々の私は
大人ぶった、奔放で秘密めいた行動にひかれて、あちこちついて歩いていました。

最初はつきあっちゃいられないと、つれなかった彼女も、
日々を重ねるうちに、私に心のうちを明かしてくれるようになり
いつしか、お互い、なくてはならない存在になっていました。

旅の話ができる、花の話も、本の話も、音楽の話も。。
互いの恋の話もいくたびしたことでしょう。
最愛の母が亡くなったときも、支えてくれたのは彼女でした。

そして、彼女からの夜半の電話にもいくたびつきあったことか。
傷つき、泣き崩れる彼女をみかねて
相手の男性に怒鳴り込んだこともあったっけ。
目を白黒させて驚いていた男性こそ、彼女の夫となった人です。
あの時は、恐かったなぁといまだに言われてしまって(笑)

支えられたり、支えたり。 つかず離れず。。
姉妹のいない私にとっては
いつのまにか、かけがえのない姉のような存在となっていました。

二人ともお酒が大好きで、強いときてる
桜咲く夜や、初夏の明るい暮れ方、コートのえりを立てる木枯らしの中も
お互いの仕事帰りに待ち合わせて、同じく仕事帰りのおじさんたちにまざって
どれだけ飲んだことか。
飲みつぶれて、目が覚めたら彼女の部屋だったこともありました。
夜中の三時に家に電話して、父にひどく叱られたのも懐かしい思い出です。

そのときに、転がり込んだ彼女の家がある京成線の駅
その初夏の花の名がつく駅には、何度もおりたちました。
「どっちがわに降りるんだっけ?」
う~ん、なつかしい!

そんな話をしながらたどりついた、枝垂桜のお寺。
急な石段を上り切ると、現れたのは、さくらいろの滝。
ああ、ここだったのですね、風待ちさん
あなたに教えてもらった桜に、私も、やっとめぐりあえました。

見事な桜が優しく風になびく、春の午後。
同じ桜をみながら、きれいだねと話せる幸せ。
いろんなことがあったよね、そしてこれからまだまだあるんだねと
そろそろ人生の折り返しをむかえて、想いも深くなります。

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あと何回こうして桜を見上げることができるのだろう。
そんなことも、ふと思う年頃になったということか
それとも、再検査の結果を待つ今の心境がそう思わせるのでしょうか。

路地裏、路地裏と歩いて帰る道すがら、
家々には、春の花があちこちで咲き初めていました。

いぬふぐり、つくし、ムスカリ、菫、花海棠、ビオラ、ラベンダー、木瓜、まんさく
花を見ながら、足を止める。そしてまた歩いてはとまる。。
花の名前をふたりで、記憶の中から手繰り寄せ笑いあう
そんなカメのような歩みを、とがめる人もいない幸せな午後。

しゃがみこんで足元の花を見ていたら、どこからか微かにいい香り
振り向くと、石塀からあふれんばかりのジャスミンの花でした。

え?今ごろだっけ?
そういえば、はごろもジャスミンが、町の花屋さんにでていました。
なんという種類かは定かではないけれど、確かに優しい花と、香りはジャスミンのもの。
その、ほなかな香りの風が
おだやかな春の夕暮れに、私たちを見送ってくれました。
by kisaragi87 | 2007-03-28 16:04 | 旅・散策
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