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娘の気持ち

10月に入って、やっと大学の遅い新学期が始まりました。

9月の半ばごろ、なんだか学校行きたくないな・・とぽろっと口にした娘、
幼稚園から今まで、おそらくこんなことを口にしたのはめったになかったこと
なんとなくモヤモヤした気持ちを抱えているのには気づいていたので
何度か話をしたのですが、
いつも最後にはお互い行き違って口げんかになってしまうのです。

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娘はずっと走ってきたような気がします。
負けず嫌いで頑張りや、幼い頃から弟の面倒をよくみて聞き分けもよく
そんな娘に、この子は大丈夫。いつもそう思って安心してきたような気がします。
だけど、どこかでずっと我慢してきたこともあったのかもしれません。

娘が小学校二年生の時、ちょうど義父が亡くなり
義母の介護は一手に私にかかり、
その時を同じくして私自身が一ヶ月ほど入院手術を受けなくてはならない時がありました。
長引く可能性も告げられ、女手のない我が家では
やむなく子供たちを児童相談所に預けたのですが
送っていった別れ際、
オンオンと泣いて後を追う息子を、背丈がいくらも変わらない娘がおぶい
「おかあさん、いいから早く行って!」 そうきっぱりと言って送り出してくれたのです。
まだその光景はありありと思い出され、小さな娘が痛々しくて不憫でした。
まだ小学校の二年生です、自分だって淋しく心細かったことでしょう
あとから書いた小学校の文集に
「私も淋しくてしょうがなかったけれど、
お姉ちゃんは泣いちゃいけないからトイレで泣きました」
と書かれていたのを知ったときは、胸がつぶれるような想いでした。

ただその頃から、お母さんは介護で忙しい、甘ったれの弟はからだが弱くてすぐ入院
私はお母さんに心配かけずに強い子にならないと、
そう思ってきたのかもしれません。

小さな頃は、人一倍泣き虫で、からだも小さくて
おしゃまで、愛くるしい笑顔があふれていたのに
それからというもの、どんどん強く、しっかりした少女になっていきました。
周りが無理だと言った難関県立にも意地でも志望を変えずにパス、
高校時代はボート部の鬼チーフマネジャーとして
連絡事項から合宿の手配、後輩や同級生の精神的なフォローから
果てはボートの整備や修理までこなす日々。
勉強など手につかなかったはずだし、実際通知表にはアヒルさんも並ぶ状態
それなのに、大学受験はまた国立一本を曲げず、私立はいっさい受けずに後期ながら合格。
親もあきれるくらいの強気の綱渡り。


そして大学に入ってからは片道二時間通学をしながら
好きなことをするために学校の近くに一人暮らしがしたいからと
その目標に向けてアルバイトの日々が始まりました。
しかしながら一年終わりが近づいて部屋もほぼ決めかけた頃
バイト先から、今やめられたらほんとうに困ってしまうという引きとめ
たしかに、個別塾の講師の仕事も受験を控えた子から先生いかないでとの声
掛け持ちのコーヒーショップも朝一番のシフトが埋まらず、存亡の危機。
もちろんアルバイトの身、自分の事情優先でかまわないはずなのに
それができない。

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ここはあなたの人生なんだから、決めたことはやれば・・
そういう私たちの言葉にも
「今やめたら、私ずっとひきずりそうだよ。私を必要としてくれているんだよ、
それに二時間通学も慣れちゃったよ」
そんなことを言いながら、ずるずると始まってしまった二年生。

どっちつかずになってしまった気持ちを抱えつつ
気がつけば、周りの子達は、それぞれに好きなことをみつけて打ち込んでいる、
一番充実しているはずの今の時期、目標も居場所もなくなって
自分には何が残っているのだろうという想いがつのってきたようなのです。

かといてって、負けず嫌いでプライドも高いせいか
今からひとりで、新たに部活やサークルに飛び込んでいく勇気も持てず、いらいらする日々。
そんな気持ちのやり場がなくて
一人暮らしのための資金で、大学の生協で斡旋していた研修旅行を申し込み
今回フィンランドへひとりで行ってきたのです。


得るものもあり、出会いもあり、すっかりその旅の魅力にははまって帰ってきたものの
現実世界に戻れば、休み明けは、大学祭の準備に追われる友達の中で
行き場のない自分が見えてしまったのでしょう。

それでも一生懸命もがいて模索している様子も見て取れます。
もっと友達の懐に飛び込んでほしい、ぶつかってほしい
そこからまた新たな出会いがあるはずだよ。
そう言いたいけれど、それがうまく伝わらないし、跳ね除けられる


ちょうどあれは高校受験の頃からでしょうか
娘は受験のストレスもあってか、私にたびたびぶつかってきました。
黙って受け止めようと思いながら、つい大人げもなく喧嘩になることもしばしば。
でも娘がほんとうに私にぶつけたかったことは、もっとほかにもあったような気もします。
もっと、もっと私に甘えたかったのでしょう。

娘の友人達も、何でもこなしてしまう強気な娘には弱音もいいづらいらしく
ちょっと距離を置かれたり、敬遠されてしまうようなところもあるようです、
自分にも厳しいぶん、他人にも厳しい、
そして強いということは、ある意味弱くも脆くもあると思うのです。
自分は誰とも繋がれないのではないかという不安や淋しさと向き合っている今
きっとこんなに強い子にしてしまったのは私なのだ思うと、ほんとうに辛くなります。

そして自分より弱い存在だったはずの弟は
いつのまにか大きくなり、飄々とした屈託の無い笑顔で
友達にすっと溶け込んでいく、大好きなこともある、
じぶんが得たくて得たくて苦しんでいるものを、何なく手に入れているように見える弟。
そしてたぶん、私の愛情もその弟の方に多くそそがれているように思い込んでいるようです。

それは違う、この胸をわって見せてあげたいほど愛しくて愛しくてしかたない
健気なあなた、やさしいあなたはお母さんが一番知っている
だけどそう思わせていまったのは私、
きっと忙しい日々の中で、
心配ないと思っていた娘の話は、なおざりにしていたこともあったのでしょう。
だけど時間は巻き戻せない、今はどうしてあげることもできない。
ただじっと見守るしかできません。

ブログをお休みしているあいだに、読み逃げしていた皆さんのブログ
その時に読んだ、eagleiさんの紹介されていた「コブタの気持ちもわかってよ」
とっても可愛いその絵に惹かれ、即日アマゾンで購入しました。

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ものの数分で読めてしまう本だけど
娘にそっと渡してみました。
いつもなら、ふ~ん、と言ったきり読むことはないはずなのに
この本はすぐに手にとって、ページを開いていました。

そして私の横にすわって、
「おかあさん、このコブタ、わぁ、かわいい! どうしよう、かわいすぎる、
そしてかわいそうだよ、
ああ、ワンコに抱きついている、ああ・・」
そう言ったきり、うつむくとぽろぽろと泣き出してしまいました。
うんうんと背に手をまわしながら、私もぽろぽろ。


娘は、いつもどおり学校へ行っています。
行き先や居場所のことはどうなったかもよくわからないけれど
大学祭のときは、やはり部活やサークルに入っていない友達と一緒に
広島、岡山方面のユースをまわってくるそうです。
大学祭にも居場所をみつけて欲しかったけれど、それは彼女が決めたこと、
そして前回記事林檎の頃でもわかったことは、誰もが多かれ少なかれ迷いとまどう時期だということ
ちょうど林檎の頃の私と、今の娘が同じ歳であることに
今さら気づきました。
あの頃の私は、それこそ大変な時期の親に、胸の内さえ明かすことはありませんでした。
それからしたら、親にこんな心配させるなんて
まだまだ甘ったれてもいるのでしょう。
ふてくされると、布団に団子虫みたいに丸まって寝てしまうところも
小さな頃と変わりません(笑)

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自分探し、まだまだ続くはず、じっと見守ることしかできないけれど、
一歩ずつ進んで行ってくれればと願っています、ゆっくりでいいから。
by kisaragi87 | 2007-10-08 16:40 | あなたへ
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