カテゴリ:恋( 5 )

はじめてのチュウ

夫のお盆休みは終了しましたが、わたしの今年のお盆休みは19日まで
(パートさんは会社側の言うまま気ままです^^;)
でも冷蔵庫が20日に来るので、20日まで休むことにしました。
お盆中は夫も動員して台所の大掃除、それから二人で近くをブラブラしてきたくらいで
特別なこともなかったわが家です。

そしてお盆あけの昨日、久しぶりに専門学校の時の仲良し4人組が
懐かしの場所で集合しました。

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と言いたいところだったのですが、遅れて来られるかもと言ってたひとりが
どうしても仕事のやりくりがつかないとのことで欠席。
それだけがちょっと残念だったけれど、三人であちこち歩いたあとに食事をして
思い出話や、旅の話、恋愛談、あの時の気持ちを思い出しながら
あの時こうしていればねえとか、他愛ない話でしんみりしたり、笑ったり。

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ここが学び舎、そして友達の後姿がチラリ^^
今までも何度か書いたのですが
わたし達が高校卒業後2年間を過した美術系の専門学校があったのが御茶ノ水。
街は古い校舎の並ぶ学生街から背の高いビルも目立つ街へと少しずつ変わってきましたが
少し細道に入ると、まだまだ当時のままの姿があちこちに残っています。

それでも思い出の場所やお店はなくなっているところも多く
また三人の記憶を寄せ集めても曖昧になっているところもあって
ひとつひとつ確かめるようにゆっくりとそれぞれの思い出と一緒に歩いてきました。

おんな坂の途中にあった「アッサム」という紅茶のお店も
今はなくなってしまったそんな思い出の場所のひとつ。
階段の途中にお店の入り口があったのだけれど
今はコンクリート打ちっぱなしの新しい建物になっていました。

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ここは当時は学生にはちょっとハードルが高いお店に思え
いつかここに入ろうね、入りたいねと素通りしたことも何度かあって
はじめてここのドアを開けたときはドキドキしたものです。

そして昨日は行かなかったけれど、
この坂を下りた先、たぶんここから遠くないところに小さな公園がありました。
そここそ、私がはじめてのチュウをした場所なのです。
昨日はそのことは友達には黙ったまま、坂をまた上へ戻りました。

とはいってもそのキスは専門学校の時のことではありません。
正直いって私の初めてのチュウは、けして早いものではありませんでした。
ずっと女子校育ちだった私は
専門学校に行ってから初めて男の子という子供っぽくてバカらしくて愛すべき存在を知り
最初はままごとみたいな小さな恋を何度かしました。

それから社会人になり、また淡い恋を経て
母がなくなった後に、大変だったねと久しぶりに家を訪ねてくれた幼なじみと
いつかデートをするようになっていました。
ただデートを重ねるたびにもどかしさが増していくのです
背も高く優しい子なのだけど、少し酔うとすぐに「ほんとうに好き?」と何度も訊く彼、
そう訊かれるたびに、なんとなくさめていく気持ち。
そんなはじめての夏のこと、
部活で思い出の場所があるんだ旅行に行かない?
そう言われ、なんとなく煮え切らない気持ちにはずみをつけたくて
いいよ、そう答えていました。
こんな時、女の子はそれなりに心構えをしているもの、
ちょうど結婚を意識し始める年頃、これからのことも真剣に考えてみたくて
ヨシッと思ったのだけど。

結局その旅、高原の夜の散歩で肩に手をおかれ
大好きだから、大切だから今は何もしないよ、そう言う彼に、
それが彼の誠実さなんだと納得し、そのまま帰りの列車にゆられて帰ってきました。


それからほどなく、高校時代の親友に紹介したいから来てと呼び出し。
初対面だったその人に一目あったときに、何かを感じていました。
一緒にすごした3時間あまりの時間のうちに、完全に私は恋に落ちていました。
こればかりは理屈じゃない、
客観的に見れば、きっと幼なじみのほうが見た目は素敵ななず。
なのに、なんでだろう。
帰りの別れ際には、幼なじみもこれはまずいと表情にも態度にも出るほど
私たち二人は見えない何かに惹かれあっていました。
そしてこの人が私の人生で一番の恋をした相手となったわけです。

その人との初めてのデートが御茶ノ水。
この街は私にも思い出の街だったけど、偶然彼もまた学生時代をすごした街であり
それから二人で何度も歩く街になりました。
そして会ってほどなく初めてのチュウ。
誰もいない坂の下の小さな公園での初めてのキスは
私が想像していたほど甘いものではなかったような、
初めてのことに、ただ心臓がドキドキするばかりだったような気がします。

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もちろんこんな形で始まった恋、
それからもそれぞれの家族を引き込んで色々なことがありました。
いろんな人の気持ちを傷つけてしまったことは否めない、
けれどその時の気持ちに歯止めをかけることもできませんでした。

それから三年越しの恋でしたが、結局実らぬまま終わりました。
今思えばそれでよかったと思えます。

御茶ノ水と言うと、専門学校に通っていたころの
中途半端な気持ちを抱えた青い林檎みたいな気持ちと、
それから数年後に忘れられない恋をしていた頃を思い出す街なのです。


眠れない 夜  君のせいだよ
さっき 別れた ばかりなのに・・

はじめてのチュウ 君とチュウ
I will give you all my love
なぜか 優しい 気持ちが Oh, いっぱい
はじめてのチュウ 君とチュウ
I will give you all my love
涙が出ちゃう 男のくせに
be in love with you  





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by kisaragi87 | 2009-08-18 09:41 |

さくら咲く店で

昨日は朝から晩御飯の仕度をして、あとは夕方に帰ってくる娘にまかせ
デートの梯子。
まずは、かねてから約束をしていた、友達が開いている呉服屋さんを訪ねました。

この友達はずっと御茶ノ水探検しようねと言いながらいまだ実行していない
専門学校時代からの友人、
夢に二度も出てきたよとメールをくれた彼女です。
数年前に一念発起して借金もたくさん作ってご主人と始めた呉服屋さん
ずっと行きたいと思いながら、先のばししていたのですが
やっと昨日訪ねることができました。

ショーウィンドーはもう春の装い、桜が咲いていました。

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ここは呉服の卸をしていたご主人のお得意さんが好意で提供してくださったところ。
だからお店の名前は当時のまま
いずれは自分たちのお店を持ちたい、それが二人の夢。
その時の店の名は「桜庭庵」ともう決めてあるのとのこと、
お子さんには恵まれなかったけれど、
今ふたりして育てているものがある、
端には見せない大変さもチラッともらしながらも、
目標があるってすてきなことだと思わせてくれるふたりです。


編集デザインを専門で学んでいた私たち、
彼女もご他聞にもれず、やはり書くことが好きな子でした。
好きな着物と、書くこと、ぜひ一緒にさせてブログを書いてみたら?
とんでもない!のリアクション(笑)
どうやら彼女パソコンアレルギーらしいのです。
あまり無理強いはできないけれど、
そのうち「桜庭庵だより」なんていうブログが、私のリンク先に現れるかもしれません。

そのあとお茶をしながらしばし昔話。
東京の専門学校で知り合った私たちですが
たまたま家が近かったということもあり、バイト先も同じ駅前の本屋さん。
いつも会うと、決まってこの頃の話になります。

帰り道にアイスを食べながら
たらたらとおしゃべりして歩いた道、恋の話、本の話、友達のこと・・
歩きながらずいぶんおしゃべりしたね。

そしてこの頃と彼女がいる時代にいつもリンクしている
私の初めての小さな恋のお話があります。

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彼女は色白で可愛くて、とてももてました、
それにひきかえ、私は12年間すごした女子校生活から急にでてきた
春のオタマジャクシみたいにポッカリするばかり。
井の中の蛙どころか、まだまだポヤポやのオタマジャクシみたいなもの、
カルチャーショックの嵐に、ただ唖然とする日々だったようなきがします。

そんな学校生活にもやっと慣れてきた頃の秋の文化祭のこと、
彼女の彼氏が連れてきたという男の子を紹介されました。
どうやら私と会わせるためだったらしいのだけど
まんまとその作戦にひっかかた私、
それからその男の子とデートを重ねるようになっていきました。


彼は工業大学の学生で同い年。
ギターが大好きで、リーリトナーや、アールクルーを教えてくれたのは彼、
練習帰りのデートでは、肩に彼の大切なギターがありました。
アルバイトでやっと得た二人のお小遣いがデート資金、
彼と私の家のちょうど中間になる池袋周辺を
この頃のデートは、ただひたすら歩いたような記憶があります。
寒い冬の夜も彼のコートのポケットのかなかで手をつなぎ
歩いてしゃべって、しゃべって歩いて・・
たまに鬼ごっこをして
先に逃げる彼を追いかけると、路地の曲がり角でいきなりワッと驚かされる、
びっくりした私をみて笑い転げる彼をまた追いかける。
子供みたいなデートばかりでした。

そしてもうひとつ楽しみなデートがあったのです。
それは彼が本屋さんのバイトの日にお客さんできてくれるとき。
にこっと笑顔だけ見せて、店の奥に行きずっと雑誌を読みながら
私のバイトが終えるのを待っていてくれるのです。
チラチラと後姿をみながらするバイトのうれしいこと(笑)

10時にあがるのを心待ちにして
店をでると、彼が外で待っていてくれます。
それから彼は片手に私の自転車、片手に私
手をつないでゆっくり歩きながらの帰り道、
何をおしゃべりしたかなんて、もうすっかり忘れているけれど
何もしゃべらなくてもきっとそれでいいような、満たされるような時だったように思います。
そういえばあまりゆっくり歩いて遅くなった日に
心配して迎えに来た父と、鉢合わせしたこともありました。

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そんな楽しくてたまらない冬をこした頃、
そう、ちょうど今ごろだったかな、
なんとなく会う日が少なくなり
どうして?と書いて出した私の手紙に
「これ以上会ってると勉強が手につかなくなるから・・」
そんな返事が返ってきました。
それが本心だったか、言い訳だったか、
いずれにしても、男の子って複雑なもんだなぁと思った初めての小さな恋
初めての喪失感でした。
そして時を同じくして、友達も彼氏と別れました。

彼女と私にとっての幼い恋のお話だけど
そんな日々を語れる友達がいることもまたしあわせ。
春のちょっとせつない、小さな恋のお話、
見送ってくれたお店のショーウィンドーには、小さな陽だまりと
桜の咲く反物があたたかでした。

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これから次のデートで御茶ノ水まで行くのと言ったら、
お店のお土産のジャスミンティーと、コーヒークッキーを持たせてくれ、
「思い出の紅茶のお店だけは私と行くまでとっておいてね」
そう笑って念をおされました。
はい、了解です、かならず行こうね、
またって約束があるのも嬉しいもの。
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by kisaragi87 | 2008-02-29 11:29 |

林檎の頃

先日30年来の友達から、
実家に来ているから来れない? と言われ
バタバタと会ってきました。
年に数回しか会えないけれど
いつでも、昔に戻れる気のおけない友人
彼女とはデザイン専門学校に通っていた頃からの友だちです。


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カトリックの女子高から打診されていたお嬢様大学への推薦
母はそこへの進学を望み、お金のことなら心配しないでと
言ってはくれたのですが
ただどうしてもその花園のような大学に身を置く自分が思い浮かばず
悶々とした末、やっと決心。
かつてから憧れていた大学、そこだけを、
だめでもともとだから受けさせて欲しいと頼みました。
家の経済状態から考えても浪人はしない、
だめなら好きな書くことと、描くことを活かせるよう
編集デザインを学べる専門学校に行くからということで、もともと自由人な父は快諾
母も説得のすえ、了承してくれました。
自分で選んだことには、後悔しないと決めたけど
またそれを承諾してくれた両親にも感謝です。

しかしながら結果は撃沈。
そして通うこととなった専門学校。
自分で決めたことに悔いはなかったけれど
御茶ノ水、駿河台という学生街を歩く時
そこを闊歩する大学生に、ちょっとほろ苦い羨望のまなざしを向けたことが
まったくなかったかといえば、それも嘘になります。


それでも、二年間通った総武線と中央線の見える線路沿いの道
柳の揺れるその道すがらには、アテネフランセ、小さな絵本やさん、
画材屋の檸檬、丸善、どれもこれも懐かしく
毎日課題とアルバイトの日々だったけど、それはいとしい日々でもありました。


クラスメイトは個性的な人ばかり。
私と同じく大学に行き損なった子、地方から、なけなしのお金をはたいてやっと上京した子、
それぞれの胸に、それぞれの想いを抱えて
お世辞にも、屈託のないという状況ではなかったけれど
私にとっては、新鮮なカルチャーショックの連続でした。

「もう三日も、田舎から送ってきた林檎しか食ってないや・・」
そんなことを言ってひっくりかえりそうな彼と出会ったのは
二年生になったクラスでのこと。
それなら美味しいお鍋でも作ろうか、と
彼の下宿先まで野菜を抱えてでかけたことがありました。

今まで知らなかった世界に飛び込んで
カルチャーショックの嵐の中で、自分がどんどん解放されていくような
不思議な高揚感もありました。

沖縄から来ていた、2歳年上のお兄ちゃんみたいなクラスメートも一緒に
彼と三人で、夜遅くまで、小説のことや将来のことについて語った夜。
落ちこぼれちゃったような人の集まりだったし
きっと青臭くて、歯が浮いてしまうようなことも話したような気がするけれど
それはなんとも言えないほど懐かしく思いだされる時代です。
親には女友達の家に泊まると嘘をついてしまったけれど
その頃は、男の子ふたりと一緒に夜更けまでおしゃべりすることに
何の後ろめたさもないほど幼く、純粋だったような気がします。

明日はバイトだから早く起きて黙って行くね
そう言った翌日
そっと布団を抜け出し、二人を起こさないように身支度をしていると
「送っていくから」
と、背高ノッポで髪がボサボサの彼。
二枚目じゃないけれど若い頃の石立鉄男によく似たひとでした。

送ってくれた電車の中は、
化粧っけなんてまるでない、起き抜けの顔の私とボサボサ君、
ぽつぽつとしかおしゃべりはしなかったような気がするけれど
なんだか妙に気恥ずかしかったような、気まずいような。
彼とは、一度だけ海にでかけたほかは
数回のデートとも呼べないようなデートをするうち卒業を迎えました。
どうしても自分より幼く見えてしまう彼に
いとしさとともに、もの足りなさも感じていたように思います。


ユーミンの「りんごのにおいと風の国」
マロンママさんのところでコメントして思い出しました。
この歌みたいにおしゃれな雰囲気など何もなかった、
それなのに、なぜかこの歌をきくと
そんな甘酸っぱい林檎のような、幼く若い頃がよみがえります。

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久しぶりに会った友達と、おしゃべりしながら
クラス会してみたいね、そうだあの頃を探しに御茶ノ水探検もしたいなぁ・・
なんて言いながら、いつかね、と約束しました。
そんなこと言いながら、きっとまた会うのは半年後なんてことになりそうです。


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ハロウィーン
いのこずち ひとつ
くちづけてセーターに投げたの
言えなかった想いを残らずこめるように

りんごのにおいと風の国へ急ぎます
風の国へ急ぎます


       松任谷由実 「りんごのにおいと風の国」より




イラスト mattarihonnpo
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by kisaragi87 | 2007-10-02 00:29 |

アイスクリーム

先々週の土曜日、母のお墓参りのあとに、すぐ近くにある、
私のもと職場のあったところを歩いてみました。
そしてそこでみつけたのが、なんとも懐かしいお店、アイスクリームのSOWA

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私は専門学校で編集デザインの勉強をしたあと
20歳のときに、当時会社を立ち上げることになった男性を恩師から紹介され
その会社に勤めることになりました。

虎ノ門というオフィス街の中にあるとも思えないような
階段がギシギシと音をたてるモルタル二階建ビル?が職場の入った建物。
一階には印刷屋さんが入り、二階は真ん中の細い廊下をはんで
小さな得体の知れないオフィスが6部屋ほど並んでいました。

最初は社長と二人きりで、社長がでかけてしまうと居残りチームは私ひとり
可哀想だからと、買ってくれたラジオでFMを聴きながら電話番。
名刺には、編集部って書いてあるけれど
どこが編集部なんだ?と笑っちゃうような日々、
それでもこれからどうなっていくのだろうというような不思議な期待感の方が大きく
少しも寂しいとか、不安だとかいう気持ちにはなりませんでした。

今回行ってみたら、24時間駐車場になって、当時のオンボロビルは跡形もなし。
でも隣にあった喫茶店は当時のままの居住まいでそこにあり
お弁当を持たないお昼にたまに入っておしゃべりしたおじさんは
まだいるのだろうかと気になったけれど、この土曜日はあいにくの準備中。

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ひと月、ふた月するうちにやがて人も増え
社長はどこから引き抜いてくるのか、ごった煮のような面々が集まってきました。
痛風持ちでコダワリ派の編集長、
コネクション係の営業マン、私の編集デザインの師匠になる女性、経理のおじいちゃん
そして翌年には、私よりひとつ年下のグラフィックデザイン担当の男の子が入ってきました。

小さなオフィスは、お父さんもお兄さんも、お姉さんも、弟もみつくろいました、
みたいなアットホームな雰囲気で
少しずつ私も仕事らしいことをさせてもらえるようになり、
残業の帰り道に見上げる東京タワーがキラキラしながら、
頑張って!と言ってくれているように見えたのです、こんなビルの隙間から。

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そして残業のある日は、よく外でグラフィック君が待っていてくれました。
約束をするわけじゃないけれど、
タイミングがあうとどちらからともなく暗黙の了解があり、
私が少しだけ時間差でオフィスをでるのです。
当時は彼も、私も付き合っている人がいたし、どうというわけではないのだけど
なぜか気があって、気になる存在。
人を惹きつける茶目っ気と、甘い面差しをもつ彼と話すのが楽しくてしかたありませんでした。

よくお昼休みにでかけたミニデートがアイスクリーム屋さん。
爽やかな風の中にも、太陽の光がまぶしくなってくると、定番のアイスの季節。
二人ともお弁当を大急ぎで食べ終えると、
それっ!と走ります。

この階段を駆け上がり、

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ここを横目に

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ここを駆け下りて

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こんな家の前を通り、

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辿り着くのがこのお店、

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今でこそ、アイスクリーム屋さんもめずらしくないけれど
当時としては、お洒落なお店だったのです。


そんなあの日も、いつものように走りました、
何が可笑しいわけでもないのに、私たちはよく笑い、
たぶんその日も、そんなふうに走ったのでしょう
アイスを選んで彼はコーンに、私はカップに入れてもらい
お店の前のガードレールに腰掛けて食べるのが最高。
と、彼がふっと言いました。

「海に行きたいなぁ、一緒に行こうか」

「海?どこの?」

「ちょっと遠くの。泊まってもいいなって思ってるんだけど」

ちょうど姉弟のようなバランスが微妙にくずれ
お互いに、その存在が気になってきた頃だったのは事実。
黙ったまま、揺れる想いを持て余していると
「わかった、やっぱりだめだよね、いいよ気にしないで」
そう言うなり、先に帰ってしまいました。

それから、ほどなく彼は会社をやめました。
小さな会社ゆえ、自分のやりたかったデザインの仕事より、
営業もどきの仕事もさせられていることに、かねてからの不満があり
いく度か社長と話しているのは知っていたので、やっぱりという気持ちだったけど
やはり何か大切なものが、ふっと消えてしまったような淋しさがありました。
もしかしたら、退職を決めていたから言った言葉だったかもしれない。。

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結局彼の真意はわからないまま。
でも、あのアイスクリーム屋さんを見つけたとき
ガードレールに腰掛けた私がその日着ていたワンピースの柄までくっきりと思い出されて
甘くて冷たいアイスクリームが懐かしくなりました。

でもこの日は、ここもお休み(笑)
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by kisaragi87 | 2007-06-11 20:37 |

まぼろしの愛染明王

今から二十数年前、奈良を旅しました。
仕事で出張だった恋人と落ち合って、奈良で一泊。
それからまた仕事に向かう彼と別れて、ひとりでもう一泊。
ずっと泊まりたいと思っていた奈良ホテルの小さなシングルの部屋。
一人旅の夜は、静かに絵葉書を書いて、クラシックホテルのひとときを楽しみました。


そして翌日向かったのが、秋篠寺。
ここは、当時読みふけっていた、立原正秋の小説 『春の寺』 にでてくる技芸天に会いたくて
でかけたのです。
立原正秋の小説は、恋愛ものが多かったのですが、
そこに書かれている風景や情景に惹かれていたように思います。
私は読んでいて、景色が浮かんでくる文章が好き。
五木寛之や、水上勉、その作品達の舞台を訪ねて旅したこともありました。
この春の鐘の舞台を訪ねたのも
古都奈良の風景がそこかしこに描かれている文章にゆっくり浸った時間の
もとへ旅してみたかったのだと思います。

当時は、まだ「秋篠宮」で有名になる以前であり
古都の田んぼ道をゆっくり歩きながらめざしたその古寺はほんとうに訪ねる人も少なく
ひっそりと、でもほっこりと建っていた。

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お目当ての技芸天とは、
摩醯首羅天(大自在天=シヴァ神)が天界で器楽に興じている時、
その髪の生え際から誕生した天女とされ、容姿端麗で器楽の技芸が群を抜いていたため、
技芸修達、福徳円満の守護善神とされる仏様だそうな。

小説の中でも、こう書かれている

「まあ、美しいほとけさまだこと」
 「色っぽいだろう」
 「そうですわね」
 「目もとが涼しい。色っぽいが、しかしよくみると、天平末期の幽愁を秘めている。
  若い頃、僕はこのほとけさまに恋をしたことがあった」

こんなふうに賛美され、多くの人をひきつけた仏様とはいったいどんな方?
ふつふつと見たい想いにかられ、でかけてみました。
実際に目にした技芸天は、ふっくらとふくよかで天女というから女性なのでしょう
色っぽいと言われれば、たしかにそういえなくもなく
そんな不思議な魅力も感じるのですが
実はこの技芸天、
日本ではこの秋篠寺だけにあるらしく
また、頭部のみが天平時代に作られた脱活乾漆像で、
からだは鎌倉時代に作られた木造ということらしいのです。

よくよく見ると、頭部からは何やら、シルクロードや、ギリシャのかおりがしてくるような。。
このお顔の下につくからだの部分がもう少しスリムなら、
きっと違った印象をうけるのかもしれないと思ったりします。

しかしながら、このアンバランスともいえる上下の違和感が、なんともいえない
雰囲気をかもしだしているのかもしれませんね。
仏像にはくわしくないけれど、この技芸天といわれるお顔に、阿修羅のようなからだをつけてみたいという不謹慎な欲望があたまをかすめました。

そしてようやく念願かなったその時に、ずっとわきにいらっしゃった
愛染明王に目をうばわれてしまいました。
赤く燃えるようなその姿。
煩悩と愛欲は人間の本能でありこれを断ずることは出来ない、
むしろこの本能そのものを向上心に変換して仏道を歩ませるとする功徳を持っている
というようなことが書かれていたように思います。

この旅行に前日まで一緒だった恋人とは、おそらく結ばれることはないだろうという人でした。
不倫とかではない、ただある理由があって彼の母親が私との結婚に強く反対していて
それを無視して一緒になることは、お互いを不幸にするだけだと彼は言ったのです。
人を傷つけて始まった恋、恋に落ちるとはこういうことだというお手本みたいな恋だったけれど
お互いを強く求めてもいました。
結ばれないと思えば思うほど、恋のゆらめく炎は静かに燃えていました。

そんな時に見た、愛染明王はそのめらめらと燃えるような激しい姿とはうらはらに
私の心を優しくいたわるようでありました。
思うだけ恋しなさい、と言われているようで、涙があふれるように癒されました。


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これだけ強く印象に残る愛染明王なのですが
今回いくら調べても、秋篠寺に愛染明王がいらっしゃるとう記述がなく
しょうじき途方にくれました。
あの時、私がみた仏さまはどうしてしまったのだろう。。
あの赤く燃える姿は、まぼろしだったのだろうか?
どうしても不思議でなりません。

つきあって3年目の春にでかけたこの旅行、その夏に恋人とは別れました。


短歌そのものを知らないのですが、あとから付け加えた、拙い返歌です。。

水底に ことりと落ちし 石ひとつ 赤い縁に 仏がみえる
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by kisaragi87 | 2007-03-23 16:51 |