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増毛 その二 国稀酒造

増毛館のご主人や奥さんには今回の旅は祖母の生まれ育った増毛を歩くことと
もうひとつ祖母の生まれた鰊漁の網本である吉田家のことが何かわからないだろうか
そんな手がかりが何かないだろうかという目的もあるのだと話してありました。

そして、それなら郷土資料室がある増毛元陣屋に行けば、
何かしら資料があるのじゃないかと言われたのですが、なんとこの日は月曜日。
元陣屋はお休みの日だったのです。
明朝は早くに増毛を発つ予定にしてあり、諦めるしかなくがっかりしていると、
国稀酒造さんでも何かわかるかもと言われました。
(国稀という名前の由来も興味深いので、歴史のページにリンクしてあります)
ついでにお酒の試飲もできますよと。

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それで立ち寄った国稀酒造。
国稀酒造さんは、明治15年の創業、
当時鰊漁の好景気が続き、需要に応じて明治35年に酒蔵を新しく建設
日本酒造りと鰊漁がともに栄えた華やかな時代があったのだと思います。
明治30年生まれの祖母、その両親の時代、
まさに国稀酒造さんの歴史とも色々な部分で重なっていると思われ
祝い事の時にはこちらからたくさんの日本酒が買われたこともあったかもしれません。

お店に入ると、酒蔵の見学ですか?と訊ねられ
お店の奥に続く酒蔵へと案内してくれました。
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増毛は暑寒別岳連峰を源とする清らかで豊かな伏流水があり
北前船も飲料水を補給した場所だったとか。
そんな良質な水に恵まれた地で作られた日本酒です。
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いくつか日本酒も試飲させていただきました。
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シンと冷たい空気の酒蔵で味わう日本酒は格別、
日本酒はあまり飲めない私だけど、からだに染み渡るような美味しさです。
日本酒大好きが高じて
とうとう日本酒利き酒師初級の資格までとってしまった夫に飲ませてあげたいなあと
中から二本を選び送ってもらうことにしました。
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色々話しながら、祖母のことなどこの旅の経緯を少し話させていただくと、
それなら鰊漁の歴史をまとめたビデオがあるので見ていきますか?と。
そして説明をしてくれた女性が会わせてくださったのが
創業者がひいひい?お祖父さんにあたるというお嬢さん。

座って熱い甘酒をいただきながら色々なお話をきかせてもらいました。
当時の鰊漁は浜から沖合いまで
幅16メートルくらい、沖に向かって200メートルくらいまでを各網元が買って
そのいわば縄張りのようなところに網をしかけて獲ったとうこと。
みながてんでに網をかけていたと思っていたので
初めて知ってびっくりしました。
それは毎年買いなおしで、たまたま買った場所が
よくとれるかどうかはその時の運しだい、
なので力のある網本は場所を少し離して何箇所も買うということ。
当時内地からも出稼ぎの人がたくさん季節になるとやってきたこと。
鰊漁とともに栄えた酒造りだったけれど
いっぱんの猟師には日本酒は贅沢品だったこと、
にぎわった当時はサイダーがよく売れて増毛にもサイダーを造る工場があったこと。
そして、吉田といえば、ひとつ思い当たる家があると話してくれました。
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もしやと思いどきどきしながら話をきいたのですが
よくきけばかなりの大きな網元だったらしく、その後も代々続いたらしいのです。
祖母の実家の吉田家の様子も話すと
それも大きな網元さんだったでしょうねということですが
祖母の代で四姉妹となり、跡継ぎがしだいに途絶えてしまったらしい話と重ね合わせると
どうやら少しくい違いが出てきます。
何しろ明治時代のこと、もう生き字引のような方もおらず
やっぱりそう簡単にわかるはずもないのでしょう。
それでも話の様子からにぎわった当時の増毛の光景が目に浮かび
もしかしたら祖母もこの酒屋さんの格子戸をくぐったこともあったのかもしれないと
そんな思いもめぐりました。

小一時間も話しこんでしまいました。
夏の観光時期じゃなくてよかった、冬の今だからこそこんなにゆっくりお話できたんですよ、
また何かわかったらご連絡しますね、
最初に説明をしてくださったお店の女性、そしてお嬢さん、
私のためにストーブまでつけて
色々資料もめくりながら思い出すまま一生懸命祖母の手がかりをさがしてくださいました。
甘酒のお代わりまでして、二人の笑顔に送られて店を後に。
ほんとうにありがとうございました。
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そろそろ夕暮れ時、宿にもどろうかな、と思いつつ
最後にちょっとだけ港のそばまで寄り道してみました。
留萌も増毛も冬の港はまだ寒そうな風景が広がるばかりです。
でも初めての鰊の便りも届いたみたいだし、春はそこまで来ているのだな、
祖母もこの留萌へと続く浜のどこかに立って
鰊船でにぎわう海を見たのでしょう。
夏には青い空を映した海がまたきれいなのだろうと思います。
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そして宿に戻ると、もうひとつうれしい報せが待っていました。
by kisaragi87 | 2010-03-11 06:21 | 旅・散策
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