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水色の待合室

昨日帰ってきてから書こうと思っていたのですが、
朝は元気なのに、仕事を終えてくるとへとへと、無理せずゆっくり行こうと思うので
のんびりすたーとです。

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土曜日は、整形外科にて原因をきちんと調べてみましょうとのお話。
軽いときは整骨院で済ませることも多かったので、
一度きちんと診ていただくのもいいかと思いました。
そしてレントゲンの結果、
ずっと以前に頚椎の傾きがおかしいと言われていたため、
それが原因だとばかり思い込んでいたのですが、どうもそれよりも、
鎖骨のあたりにある神経が何かの原因で圧迫されて、手がしびれたり、だるくなったりする
胸郭出口症候群という症状に近いらしいのです。

家に帰って調べたら、女性では20~30代に多くというくだりを発見!
加齢により。。なんて言葉を予想していたから、
ちょっと嬉しい言葉に、にんまり♪ って場合じゃないのだけどね(笑)
どこの神経が圧迫されているかわかりにくいとのことで、MRIの予約をして帰ってきました。
20代の時のスキー骨折や30代で肋骨の腫瘍を切除したことなども、
バランスを崩している遠因かもしれません、
部品が一部欠如しているのですもの、少々バランスが悪いのもいたしかたないですね。


ところで、この病院、職場の同い歳の友人が、
ここはぜったいいい病院だから行ってごらんと教えてくれた所なのです。
ただし土曜日は混むのを覚悟で出かけることと念を押されたので
それなら、ゆっくり本でも読みましょうと、文庫本をバッグにでかけました。

案の定、受付で整形は少々待ち時間が長くなりますとのお告げ、でもとても感じがよくて
心の準備もあったので、了解ですと受付番号を受け取りました。
さて、腰を落ちくけて本を読み始めたのもつかの間
悲しいかな15分も読まないうちに睡魔がおそってきました。
抗えども、抗えども何度も訪れる眠気の波、
こんな姿勢でうたた寝すれば、
痛む首や肩にいいわけないのはわかっているのだけど、ついに陥落。



はっ、と気がついたのが、隣に腰掛けた老婦人の声、
通りがかりの職員に声をかけていたのですが、
ちょうど私の親と同じくらいのお年頃と見えました。

「あの~、院長先生の名札がないのだけど、お加減でも悪いの?」

「ああ、院長先生は先月お亡くなりになったんですよ、ご存じなかったですか」

「えっ?そうだったんですか・・」

しばらく絶句のあと

「ああ、残念ねぇ・・ほんとうにいい先生だったのに、寂しいわ。
 私はね、昭和の36年に子供を産んだのだけど、難産で息子は仮死状態で生まれてね
 命はとり止めたけれど、股関節に障害が残ってしまったの
 そこで励ましてくれたのが院長先生で、必ず治るから、力になるからと言ってくださってね。
 それからは息子も私もずいぶんお世話になったけれど
 院長先生にさわってもらうだけで、もう痛みが消えていくような気がするのよ」

「そうでしたか、今回の葬儀でも、同じように言ってくださる方が、
 ほんとうにたくさんいらっしゃったんですよ」

「ほんとうに、寂しいわねぇ・・」

「はい、私たち職員も、大切な灯が消えてしまったようだと言ってるんです」

「そうだったの・・・ ああ、ひきとめてしまってごめんなさいね」

「いえ、そのお言葉、とっても嬉しいです、どうぞお大事になさってくださいね」

そう言って、会釈を交わす二人、
ふと見ると、隣のご婦人は、バッグを開いてハンカチを出し
そっと目頭を押さえていたのです。


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それにしても、こんなに愛されるお医者さんって、どんな人だったのだろう。


それからほどなく、私の名前が呼ばれました。
診察室の中で待っていてくれたのは
都内の大学病院の勤務医をやめて、あとを引き継がれたというご子息。
私と同じ年代でしょう、どことなくお父さまを彷彿とさせるような、穏やかで丁寧な診察でした。

帰りがけ、やっと人影もまばらになった午後の待合室に
さっきの老婦人の姿はありませんでした。
でも、腰掛けていた水色のソファーを見たら
そっとハンカチで涙をぬぐっていた様子が思い出されて
なんだか優しい気持ちになれました。
by kisaragi87 | 2007-07-04 06:58 | 日々雑感
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