人気ブログランキング | 話題のタグを見る

おめでとう

chirumeguさんのお嬢さんが、愛する人のもとへ巣立っていかれたという知らせをきき
そうか、何かはなむけのプレゼントをしたいな~と思っていたのですが
そんな折も折、なんとぷら~さんのお嬢さんも、彼氏を家に連れてこられたとか、
きっとゆくゆくは、おめでたい話になることでしょう、
そして今度の土曜日は、風待ちさんのご主人の従姉妹さんも結婚される、
なんとも、にわかにおめだたい話が続きそうな気配です。

本来なら「祝婚歌」を贈るところなのですが
以前にご紹介したので、今回は、私が祝婚歌と出会うきっかけになった
吉野弘さんの詩をもうひとつご紹介しようと思います。

実はこの詩「奈々子に」は
私がちょうど結婚を決めたときに出会った詩なんです。
仕事と、結婚までのスケジュールを書き留めた赤い手帳、
そこには予定のメモと一緒に、その時に感じたことを短い詩にして書いたり、
また好きな言葉や詩、親への想いなどが書かれています。

おめでとう_c0114872_732858.jpg


結婚を決めたとき、すでに母はなく、
私の一番のきがかりは、父と祖母のことでした
シャンとして気丈だった祖母も、そのときはもう90歳を超え、
たった一人の孫の私が頼りであり、あちこちぼやけてきていました。
そしてそんな祖母と父をおいて結婚するということは
その祖母の世話も父に負わすことになるわけです、
正直迷いました、私一人が幸せになってもいいのだろうかと逡巡しました。
その想いを夫となる人にぶつけました、
そうしたら、その人は
「難しく考えるのはやめようよ、みんな一緒に幸せになれるようにすればいいんだろ」
私のぐずぐず迷う言葉をなんなく笑顔で吹き飛ばしてくれたのです。
そうか、この人はきっと母が会わせてくれた人なんだ、そんな気がしました。
そしてこの言葉に後押しされ、お互いの家族ひっくるめて幸せにしたいね、と
一緒に住める家を作ろうねと約束しました。
そしてその話を父へも打ち明けると父も笑顔で喜んでくれたのです。

「おまえの幸せがお父さんの幸せであり、おばあちゃんの幸せなんだから
 みんなで住めるようになるまで
 お婆ちゃんのことは、お父さんにまかせなさい」

そう言って背中を押してくれました。
私は母のことばかり書いてきましたが、実はとびきりの父親っこでした。
父は何でもできる魔法使いみたいな人だと思っていました。
大好きで、大好きで、
大人になったらぜったいお父さんと結婚するんだと言い張っていました(笑)

それが思春期を迎えるころから、父と祖母のいさかいが増え、
それに苦しむ母を見て、急に父に対する幻滅とともに反抗を始めたのです。
お互い似ているゆえ、ぶつかったらとまりません、
いく度大泣きして家を飛び出したことでしょう、
そんな数年を過しながら、やっと父と子供の頃のように向き合えるようになったのは
母の死を迎えてからでした。

娘の報告を聞き、私の幸せを一番に考えてくれた父でしたが、
結婚を一緒に喜び、手放す寂しさを分かつ妻はなく、胸のうちは
安堵や嬉しさとともに、寂しさもいっぱいにあふれていたはずです。

そんな父の想いに感謝でいっぱいな時、ちょうど出会ったのがこの詩でした、
手帳の日付をみると結婚の3ヶ月前になっています。
慈しみ、愛情たっぷりに育ててもらった自分の今までを想い、
そして父の心境をこの詩に重ねて感じたのかもしれません。

同じように、大切な愛するお嬢さんを手放す、chirumeguさんのだんな様のでぶにいさん、
そしてぷら~さん、そんなお父さんたちにも贈りたく、この詩を載せました。



「奈々子に」          

                 吉野弘

赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。
 
唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。
  
お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛するのをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき
他人があり
世界がある。

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。

苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるのはむづかしく
はぐぐむにはむづかしい
自分を愛する心だ。


おめでとう_c0114872_7323943.jpg


今日は大安^^
お嬢さんたちに、どうぞたくさんの幸あれと祈りつつ、おめでとう!
by kisaragi87 | 2007-07-09 07:51 | 思い出ぽろり
<< 梅雨の夕焼け 霧がはれました >>