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母の子守唄

chirumeguさんのところで、お母さまのことが書かれていたのを読んだら
なんだか母が恋しくなりました(笑)
いい歳してって、笑われるかもしれないけれど
年に一度か、二度くらい、むしょうに母が恋しくなることがあります、
そんな時は、幼い子どものように泣きます、そうすればあとはすっきり
いくつになっても、母は母なんです。

母は、私のように
こまごまと書き残すのが得手ではなかったようで
もの心ついてからは、私自身の記憶のなかにも母がいっぱいいるのですが
それ以前の幼い日々のこととなると、時おり母自身の口から話される思い出ででしか
知ることができませんでした。
(父の記憶は、あくまでも父としての記憶なので母のそれとは微妙に違うのです)


それも仕事が忙しくなり始めてからというものは
家でゆっくり昔のことなど語り合うこともわずかとなり
そのまま走り抜けるように
私が21歳の時にたった4日を病院のベッドですごしたきりで逝ってしまいました。


そんな母がよく話していたのが
子守唄のこと。

まだうんと幼い頃の私を寝かしつける時に
母が歌ってくれた子守唄。

母はクリスチャンではありませんでしたが、
祖父の影響で、よく教会には足を運んでいたみたいなのです。
そんな時に親友からクリスマスに贈られた
宝物のように大切にしていた賛美歌集。


母の子守唄_c0114872_18105667.jpg



ことあるごとに開いて、私にも見せてくれ、いくつかの賛美歌も教えてくれました。
小さな私が母の好きな歌に、丸印などつけて好き放題をしても、母は叱りませんでした。
その賛美歌集にある子守唄が 「ゆふひおちて」

「一緒に布団に入って、この歌を歌うとね、
 もう2番になる頃には小さな寝息が聞こえてくるの」

そんなことを思い出しながら話す母はとてもやさしい様子をしていました。
そんな母を見ているのがうれしくて、
幼い自分と母のひとときがもどってきたような気がしたものです。



ゆふ日おちて  そらくらく
ねにゆく鳥  かげきえぬ
星はさめて  花ねむり
けふはさりて  夜はきぬ


神よこよひ  よもすがら
みふところに  やすませて
てりかがやく  みすがたを
みさせたまへ  夢路にも

                       賛美歌461番「LYNDHURST」より




4番まであるこの歌ですが
たしかに私が憶えているのは2番まで、
やはり長くても、二番まできかぬうちに眠ってしまったのでしょう。


何度も母が私に歌ってくれたこの子守唄を
たった一度だけ私が母に歌ったことがありました。


母の子守唄_c0114872_18124883.jpg



それは母の最期のとき。
苦しくて水をほしがるのに、それも叶えてあげることができず、
何もしてあげられない、少しでも安らかに眠らせてあげたい一心で歌った歌。
足や腕をさすりながら、歌った子守唄、
不思議なことに、その歌を口ずさみはじめたら
母が耳をすますように、ひととき荒くなっていた呼吸がおだやかになったのです。


あ、お母さん、きいてる?
お母さんが、なんども歌ってくれた子守唄だよ。


その最後の子守唄の翌日、母は亡くなりました。

しばらくは、母のその時のことを思い出すのもつらく
胸の奥に封印してきたような思い出でしたが
やがて、時というやさしい風が少しずつ想いを吹きすぎ
今はあたたかな、やさしい思い出になりました。
ずっとずっと忘れられない子守唄です。


最初で最後の母へ歌った子守唄。
それは幼い私を眠りの国へいざなってくれた母の子守唄。


追記
セイロンさんが「夕日落ちて」が聴けるURLを探してくださいましたので、こちらにリンクしてみました。
セイロンさんありがとう!

by kisaragi87 | 2008-02-25 18:18 | 思い出ぽろり
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